非常用電源の稼働は、企業の事業継続において極めて大きな意味を持ちます。しかし、実際の現場では想定外の事態に直面することが少なくありません。
非常用電源設備の保守点検に携わる経験から、見落としがちな課題をお伝えします。
まず注目すべきは、定期点検の質です。法令で定められた点検項目を満たすだけでは、実際の緊急時に確実な動作を保証できません。特に、負荷試験を実施していない設備では、本当の意味での性能確認ができていないのが実情です。
また、燃料の品質管理も重要な要素です。長期保管された燃料は経年劣化によって性状が変化し、始動不良の原因となることがあります。特に、バイオディーゼル燃料の混合率が上がっている現状では、より慎重な管理が必要となっています。
さらに、始動用バッテリーの状態も見逃せません。外観上は問題なく見えても、内部の劣化が進行していることがあります。定期的な電圧測定だけでなく、充電特性の確認も欠かせません。
盤内の制御機器についても要注意です。特に電子部品は経年劣化による不具合が発生しやすく、突然の故障につながる可能性があります。予防保全の観点から、推奨交換時期を考慮した更新計画が必要です。
設置環境による影響も軽視できません。地下に設置された非常用発電機では、湿気による配線の劣化や、換気不足による運転時の温度上昇など、特有の課題があります。
これらの問題に対する具体的な対策として、以下の取り組みが効果的です。
1. 実負荷での定期運転確認
2. 燃料の定期的な品質検査と更新
3. バッテリーの充放電特性試験
4. 制御機器の計画的な更新
5. 設置環境に応じた重点管理項目の設定
また、運用面では、以下の点に留意が必要です。
・運転手順の定期的な見直しと訓練
・関係者による情報共有の徹底
・故障時の対応フローの整備
・部品在庫の適正管理
非常用電源は、文字通り非常時のための設備です。日常的な維持管理の質が、いざという時の信頼性を左右します。形式的な点検に留まらず、実効性のある保守管理体制の構築が求められています。
専門的な知見に基づく総合的な判断と、適切な予防保全の実施が、設備の確実な稼働を支える基盤となります。非常用電源の管理は、単なる法令遵守以上の意味を持つことを、現場の経験は教えてくれます。